「検索」の意味が変わっている——国内統計が示す現実
「自社サイトへの流入が減っている気がする」「競合の名前はAI回答に出てくるのに、自社は一切引用されない」——事業会社のWebマーケ担当者から、こうした声が急速に増えています。感覚的な不安ではなく、この変化は国内統計によって裏付けられています。
総務省の令和7年版情報通信白書によると、日本において何らかの生成AIサービスを「使っている(過去使ったことがある)」と回答した割合は、2024年度調査で26.7%に達しました。2023年度調査の9.1%から比較すると、わずか1年で約3倍近い水準へと拡大しています。
総務省「令和7年版 情報通信白書|個人におけるAI利用の現状」
この数字が示すのは単なる「便利ツールの普及」ではありません。生成AIが「情報を調べる手段」として日常に組み込まれ始めたという、検索行動そのものの構造変化です。従来であれば検索エンジンに向かっていたユーザーが、今やAIに問いを投げかけ、その回答をそのまま意思決定の根拠にするようになっています。
同白書では、AI利用意向について「調べものやコンテンツの要約・翻訳における利用意向が相対的に高い」とも指摘されています。つまり、生成AIの利用拡大は「文章生成」や「業務自動化」よりも先に、情報収集・検索の領域で浸透しているという点が重要です。
総務省「令和7年版 情報通信白書|個人におけるAI利用の現状」
Webマーケ担当者にとって、これは何を意味するのか。従来のSEOは「検索キーワードに対してページをランキング表示させる」という構造を前提としていました。しかしAI検索においては、AIが複数のソースを参照・統合して「答え」を生成し、ユーザーはその答えを受け取るだけです。ランキングの10位以内に入っているかどうかではなく、AIの回答に引用されるソースとして選ばれるか否かが問われる時代になりました。
この記事では、国内の統計データを軸に、AI検索の台頭がどのように検索行動を変えているかを読み解いていきます。担当者が「自社サイトが引用されない」という課題に対して、どこから手をつけるべきかの方向性を示すことが本稿の目的です。
なお、AI検索の普及がどこまで進んでいるかの定量的な全体像については、AI検索の普及率は今どこまで来たか、国内外の最新データまとめ2025も合わせてご参照ください。
「情報収集でのAI利用」が急拡大——担当者が直面している現状
検索行動の変化を理解するうえで見落とせないのが、職場における生成AI利用の動向です。NIRA総合研究開発機構の第3回デジタル経済・社会に関する就業者実態調査(速報)によると、月1回以上、仕事で生成AIを利用している就業者の割合は22%まで拡大しました(2023年10月時点の12%から増加)。特に、2024年12月時点と比べて情報収集・検索での利用が増加しているとも報告されています。
NIRA総合研究開発機構「第3回デジタル経済・社会に関する就業者実態調査(速報)」
この調査が示す重要な点は「仕事での利用」という文脈です。つまり、BtoBの情報収集においても、意思決定の参照先としてAIが活用され始めているということ。事業会社のWebマーケ担当者が「競合比較」「ツール選定」「業界トレンドの把握」などをAIに問いかけるシーンは、もはや珍しくありません。自社のサービスや製品がAIの回答に登場しないということは、その意思決定プロセスから自社が除外されているに等しいのです。
① 利用者層の広がりが加速
生成AIの利用経験者は2023年度の9.1%から2024年度に26.7%へと急増。就業者の情報収集用途での利用も拡大しており、マーケ担当者・購買担当者・経営層など意思決定に関わる人材への浸透が進んでいる。
② 「情報収集」用途が先行して普及
調べもの・要約・翻訳といった情報収集領域での利用意向が相対的に高い。コンテンツ生成より先に、ユーザーの「調べる行為」がAIに移行しつつある点が重要。
③ 仕事での利用が継続的に増加
月1回以上の仕事利用が22%まで拡大。BtoB文脈での情報探索においても、AI経由の参照が増加しており、サイトの被引用性が商機に直結し始めている。
Webマーケ担当者が「AI検索に自社サイトが引用されない」と感じたとき、その原因の多くはコンテンツの質や構造ではなく、そもそもAIが参照しやすい形でサイトが設計されていない点にあります。従来のSEOは、検索エンジンのクローラーに対して最適化することを前提としていました。しかしAI検索が評価する要素は、必ずしも同一ではありません。
たとえば、あるページが検索エンジンで上位を取れていても、AI検索に引用されないケースが生じています。これは、AI検索が「質問への回答として使えるか」「情報の一次性・信頼性があるか」「文脈を明確に構造化しているか」といった軸でソースを評価するためです。ランキングとは別の評価軸が存在することを、担当者は認識する必要があります。
現状を正確に把握するための最初の実務アクションは、自社サイトの主要ページに対してAIが実際にどのような回答を返すかを定期的に確認することです。「自社商品名+課題キーワード」「業界名+選び方」などの問いかけに対するAIの回答を記録し、自社が引用されているか・されていないかを観測してください。
なぜ自社サイトはAI検索に引用されないのか——構造的な原因を読み解く
「AI検索に引用されない」という課題の根本原因は、「従来型SEOの最適化」と「AI検索の評価基準」がずれていることにあります。この乖離を理解しないまま既存のSEO施策を続けても、AI検索における存在感は高まりません。
AI検索の仕組みを簡単に整理すると、AIはユーザーの問いに対して複数のウェブページを参照し、その中から「回答として適切な情報」を選び出して統合します。この「選ばれる」プロセスで評価される要素を理解することが、AI検索対策の出発点です。
① 情報の一次性・権威性の欠如
AI検索は、情報の出どころを重視します。「どこかから引用しただけ」「業界一般論をまとめただけ」のコンテンツは評価されにくい傾向があります。自社の知見・データ・経験に基づく一次情報がなければ、AIに引用されるソースとしての優先度は下がります。
② 構造化の不足——AIが「読める」形になっていない
AI検索は人間のように文脈を読み解くのではなく、情報の塊として理解します。見出し・段落・箇条書きが適切に使われていないページは、AIが内容を正確に抽出しづらく、引用候補から外れやすくなります。
③ 質問への直接回答が欠けている
従来のSEOコンテンツは「キーワードを含む文章」を書く傾向がありました。しかしAI検索では「ユーザーの質問に直接答えているか」が重視されます。問いと答えが明確に対応しているコンテンツ構造になっているかが問われます。
日本国内において生成AIの利用が「情報収集・検索」用途で先行して拡大しているという統計の事実は、この評価基準のギャップが実際の流入機会の損失につながっていることを意味します。利用者がAIに問いかけ、AIが回答を返す——その回答の中に自社が存在しなければ、ユーザーはそのまま他社の情報を基に意思決定します。
もう一つの原因として、コンテンツの「鮮度と更新性」があります。AI検索が参照するソースは、最新の情報を持つページが選ばれやすい傾向があります。数年前に作成したまま放置されているページは、たとえ検索エンジンでの順位が高くても、AI検索への引用率は低下していきます。
さらに、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の可視化が不十分なケースも多く見られます。誰が書いたのか、どのような経験・専門知識に基づくのか、組織としての信頼性はどこで確認できるのか——これらがページ上で明示されていないコンテンツは、AI検索のソース選定で不利になります。著者情報、会社概要へのリンク、参考文献の明示といった要素が、AI検索時代には新たな意味を持つようになっています。
次のステップとして、自社の代表的なコンテンツページを上記の3つの観点(一次情報の有無・構造化・質問への直接回答)でセルフチェックすることを推奨します。この確認作業が、具体的な改善の起点になります。
AI検索に引用されるサイトへ——今日から始める実践的な対応ステップ
統計が示す変化の速度は速く、対応を後回しにするコストは日ごとに高まっています。ここでは、事業会社のWebマーケ担当者が「今日から動ける」具体的な実践ステップを整理します。
AI検索対策の本質は「AIが引用したくなるコンテンツ」を作ることであり、それは従来のSEOコンテンツとは別の設計思想を必要とします。
まず前提として確認しておきたいのは、AI検索対策と従来SEOは「どちらか一方」ではなく、並行して進めるものだという点です。AI検索はウェブ上のコンテンツを参照します。従来の検索エンジンで評価されないページは、AI検索にも参照されにくい。しかし逆に、従来SEOで上位であってもAI検索に引用されないページも存在します。両者の評価基準を理解したうえで、コンテンツを設計することが求められます。
- 主要ページに「著者情報」「監修者情報」が明記されているか
- コンテンツの中に自社独自のデータ・事例・知見が含まれているか
- H2・H3見出しが「ユーザーの質問形式」または「答えを端的に示す形式」になっているか
- 各ページのトップ部分(冒頭300文字以内)で、そのページが何の問いに答えるかを明示しているか
- 重要なページが過去1年以内に内容更新されているか
- 会社概要・サービス説明ページで信頼性を裏付ける情報(実績・資格・所在地等)が確認できるか
- 自社サービス名や専門分野のキーワードで実際にAIに質問し、回答を確認したことがあるか
3つ以上「□」のまま(未実施)の項目がある場合、AI検索への引用機会が損なわれている可能性があります。優先度の高い項目から順に着手してください。
次に、コンテンツ設計の具体的な方針を3点で整理します。
1. 「問いと答えの対応」を冒頭で完結させる
AI検索はページ全体を精読するわけではなく、問いに対する回答部分を抽出します。そのため、見出し直下の段落で「この見出しが問う問いへの答え」を端的に書くことが重要です。「導入部で焦らす」構成はAI検索との相性が悪く、改めることを優先してください。
2. 一次情報を意図的に組み込む
業界で一般的に言われていることをまとめるだけのコンテンツは、AI検索においては「引用価値が低い」と判断されやすい。自社の経験から導いた視点、自社が実際に取り組んだプロセス、業界内でよく起きる失敗パターンの観察など——他では読めない情報を意図的に盛り込む設計が必要です。
3. 構造化データとHTML構造の整備
FAQページのSchema.org対応、パンくずリストの構造化、見出し階層の整理など、「機械が読みやすい構造」への整備はAI検索対策としても有効です。特にFAQ形式のコンテンツは、AI検索が「ユーザーの問いに対する回答候補」として参照しやすい形式です。
具体的な対策の全体像をステップ形式で把握したい担当者には、AI検索対策のロードマップ、Webマーケ担当者が今から始める6ステップが参考になります。実務担当者が優先順位をつけて動けるよう整理されています。
実践において陥りがちな落とし穴が一つあります。「AI検索対策をしよう」と思い立ったとき、多くの担当者がまずコンテンツの追加・新規制作に動きます。しかし既存の重要ページを「AI検索に引用されやすい形」に改修することの方が、短期間での効果を期待しやすい施策です。新規制作より先に、既存の主力コンテンツの見直しから着手することを強く推奨します。
AI検索に「引用されるサイト」には、共通するSEOの特徴があります。W-BASEでは貴社サイトのAI検索対応状況を診断し、具体的な改善策をご提案します。
SEO対策の詳細を見る →W-BASEのSEO支援が、AI検索対応の起点になる理由
「何から手をつければいいかわからない」「社内にAI検索に詳しいメンバーがいない」——こうした状況にある事業会社のWebマーケ担当者にとって、外部の専門家と連携することが現実的な選択肢になります。
AI検索対策は、従来のSEO施策の延長線上にあるようで、実際には評価基準の読み方・コンテンツの設計方針・効果測定の方法が大きく異なります。社内でゼロから体制を作るよりも、すでにAI検索の動向を把握している支援者と並走する方が、対応の速度と精度を高めることができます。
株式会社W-BASEのSEO支援では、AI検索時代に対応したコンテンツ設計・サイト構造の改善・評価基準の変化への対応を一体的に支援しています。単発のコンサルティングではなく、担当者が継続的に判断できる状態を作ることを目的とした伴走型のアプローチをとっています。
具体的には、現状サイトの「AI検索引用可能性」の診断から始まり、優先度の高いページへの構造改善・コンテンツ改修、さらに効果測定の仕組みづくりまでを一貫してサポートします。担当者が「どのページがAIに引用されたか」「どの改修が効いているか」を自分で確認できる状態を作ることが、W-BASEが重視している支援の方針です。
AI検索に引用されるコンテンツの条件については、AI検索に強いコンテンツの条件を海外事例と自社検証から導くで詳しく解説しています。支援の方向性を検討する前に、この記事で「引用されるコンテンツとは何か」を整理しておくことをお勧めします。
W-BASEのSEO支援サービスの詳細は、W-BASEのSEOサービスページからご確認いただけます。初回の相談・現状ヒアリングから対応していますので、まず「自社サイトの現状をどう診断すればよいか」という段階からご相談ください。
AI検索対応を後回しにすることのリスクは、時間が経つほど拡大します。利用者の割合が急増している現在、競合他社が先にAI検索での引用ポジションを確立してしまうと、後から追いつくコストは大きくなります。早期に動くことが、中長期的な競争優位につながります。
料金体系や支援内容の詳細については、料金ページまたはお問い合わせフォームからご確認いただけます。
まとめ——統計が示す変化の速度に、サイト対応を追いつかせる
本稿で確認してきた国内統計の要点を整理します。生成AIの利用経験者は2023年度の9.1%から2024年度には26.7%へと急拡大しており、特に「調べもの・情報収集」用途での利用意向が高い状態にあります。また、仕事での生成AI利用も22%まで拡大し、情報収集・検索での活用が増加しています。
NIRA総合研究開発機構「第3回デジタル経済・社会に関する就業者実態調査(速報)」
これらの統計が意味するのは、「AI検索対策はいずれ必要になる」ではなく、「すでに対応が必要な段階に入っている」という事実です。検索行動の変化は、既に起きています。
担当者が今すぐ取れるアクションは明確です。①自社の重要コンテンツを「問いと答えの対応」「一次情報の有無」「構造化」の観点でセルフ診断する、②主要キーワードでAIに実際に質問し、自社が引用されているかを確認する、③引用されていない場合は改修の優先順位をつけて動き始める——この3ステップです。
AI検索の評価基準の変化全体を体系的に把握したい場合は、AI検索時代にSEOの評価基準はどう変わったか、最新動向を整理するも合わせてご確認ください。担当者が「何が変わり、何を優先すべきか」を判断するための整理が行われています。
統計の変化速度は速く、サイト側の対応はどうしても後手に回りやすい。しかし、対応の方向性さえ正しく定まれば、着実に改善することができます。本稿が、その方向性を定めるための一助になれば幸いです。